特集 感染症
2.入院患者の不明熱—「不明」から答えを導く思考プロセス
山本 舜悟
1,2
Shungo YAMAMOTO
1,2
1京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 医療疫学分野
2日本赤十字社和歌山医療センター 感染症科
pp.169-178
発行日 2013年12月1日
Published Date 2013/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900424
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■何をもって「入院患者の不明熱」とするか?
1991年にDurackらが不明熱fever of unknown origin(FUO)の再定義を行った際に,Petersdorfらの古典的不明熱に加えて,病院内の不明熱(nosocomial FUO),好中球減少患者の不明熱(neutropenic FUO),HIV患者の不明熱(HIV-associated FUO)の3つを加えた。このうち「病院内の不明熱」の定義は表1のとおりである1)。
この定義は疫学研究で用いる場合には便利だが,現場では38.2℃までしか上がらなくても当然不明熱として扱う。38.3℃という区切りや「3日間」の精査や,何が「適切か」と言い出すときりがないので,大雑把に「入院時にはなかった発熱が入院後に起こってきて,3日前後頑張って調べたもののよくわからない」状態を「入院患者の不明熱」としてとらえておくのが実用的だろう。
「病院内の不明熱」患者の多くはすでに診断された何らかの基礎疾患を有し,さまざまな治療を受けている。典型例としては重症外傷や大手術,臓器移植,熱傷,癌の化学療法,内科集中治療など1)がある。病院内の不明熱の原因は多岐にわたるが,鑑別にあたっては,患者の背景因子として,入院の契機になった基礎疾患と,それに対する治療の合併症を考慮する必要がある。このカテゴリーに属する原因は,医療介入に続発したものが多い。それは留置されたカテーテルであったり,人工物であったり,手術創であったり,薬剤であったり,輸血であったりする。必然的に,入院後に起こってきた発熱の原因は古典的不明熱の原因とは異なってくる。
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