特集 血液疾患
9.内科で遭遇し得る緊急症:②血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)—溶血性尿毒症症候群(HUS),非典型HUSとの異同,鑑別
酒井 和哉
1
,
上田 恭典
1
Kazuya SAKAI
1
,
Yasunori UEDA
1
1倉敷中央病院 血液内科/血液治療センター
pp.975-985
発行日 2015年12月1日
Published Date 2015/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900200
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血栓性微小血管症thrombotic microangiopathy(TMA)は,微小血管症性溶血性貧血,血小板減少,細血管内血小板血栓による臓器機能障害,の3徴候を示す病理学的診断名である。TMAには,代表的2疾患である血栓性血小板減少性紫斑病thrombotic thrombocytopenic purpura(TTP),および溶血性尿毒症症候群hemolytic uremic syndrome(HUS)に加えて,その他のTMAとして膠原病や造血幹細胞移植,薬物,妊娠などに関連したTMAが含まれる。典型的TTPは,ADAMTS13*1の活性著減(10%未満)で診断され,典型的HUS(typical HUS)の多くは志賀毒素Shiga-toxin(Stx)を産生する腸管出血性大腸菌(EHEC)感染に合併する。
TTPでは,溶血性貧血,血小板減少,腎機能障害,発熱,動揺性精神神経症状の5徴候を呈し,HUSではそのうちの前半3徴候を呈する。ADAMTS13が発見されるまでは,TTPは神経症状優位,HUSは腎機能障害優位とされ,臨床症状を基本に診断されてきた。しかし,ADAMTS13活性が測定されるようになり,TTPではADAMTS13活性著減(10%未満)が多く,HUSでは一般にADAMTS13活性は著減しないことが明らかになっている。HUSには,病原大腸菌O157などが産生する志賀毒素に関連する典型的HUSのほかに,補体制御異常に起因する非典型HUS(atypical HUS)が含まれる。本稿では,TTPとHUSを中心に,TMAの診断および治療について述べる。
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