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重症患者の多くは急性腎障害(AKI)を呈し,AKIを発症することにより多くの合併症が生じ得る。現在のAKIのマネジメントは血行動態や体液バランスの適正化や腎毒性物質を可能なかぎり避けることなど保存的療法が中心であり,重症例の場合は腎代替療法が行われる。特に体液バランスの調整のために輸液が行われることが多い。輸液療法は伝統的に行われているが,AKI患者は特に体液過剰になりやすい。体液過剰が続くことはAKI患者の死亡率の上昇やAKIの進行と関連しているため適切に管理する必要がある。
重症患者の背景疾患において敗血症は重要である。敗血症性ショックの患者はAKIを呈することが多い。敗血症性ショックを呈する場合,血管透過性亢進による循環血漿量減少および末梢血管拡張が病態の中心であり,酸素需給バランスの適正化と灌流圧の維持が目標となる。輸液(と昇圧薬)の投与は,心拍出量の増加に伴う酸素供給量増加と,血圧上昇に伴う組織灌流圧の改善を期待して行われる。輸液戦略においては,2001年にRiversら1)が,early goal directed therapy(EGDT)を提唱して以降,初期治療の時点で大量の輸液を投与することが一般的になった。一方で,重症患者における過剰輸液は予後を悪化させるとの報告もあるため2),全身状態が安定し,血圧や酸素需給バランスが改善したあとには,輸液量をいかに減じるかを考える,いわゆる,過剰輸液の害を防ぐ重要性が指摘されている。重症患者に対する蘇生輸液開始後の体液過剰を避けるにはどうすればよいのだろうか? 本稿では,近年提唱されている輸液のフェーズ(ROSEモデル)をもとに,いかに除水を行うかに関してタイミングや方法(de-escalationとde-resuscitation)について現時点での知見を確認し,敗血症患者のみならず重症患者全般に対して過剰輸液の害を防ぐ方策を解説する。
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