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え? 知らないの?心筋保護法
配野 治
1
1千葉メディカルセンター 臨床工学部
pp.778-784
発行日 2017年7月1日
Published Date 2017/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200439
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心臓手術の進歩とともに心筋保護法も変化してきた。心筋保護法が確立されたことにより,長時間の大動脈遮断においても,安定した成績が得られるようになった。成績がよくなった主な理由は,晶質性心筋保護液としてミオテクターが安定した成績を収めたこと,血液心筋保護法が普及したことだと考える。心臓手術は心筋保護法の進歩とともに安全性が高まり,心筋保護法は心臓手術における重要な役割を確立した。
一方で近年,常温で体外循環を行う手法が確立し,心筋温が上昇する可能性が高くなった。その理由の1つに,非冠動脈性側副血行路の影響が挙げられる。常温の血液が冠動静脈を灌流することで心筋保護液が洗い流され,心筋温が上昇する。そのため,常温体外循環では心臓が動きやすい。心臓が動くと心筋保護液の注入間隔が短くなり,注入量が増加する。心筋保護液の増加は血清カリウム値の上昇をまねき,遮断解除後の自己心拍再開に影響を与える。これらのことから,現在の常温体外循環および体外循環時間の短縮化に合わせ,心筋保護法も変化する必要がある。
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