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はじめに
Furchgottらの内皮由来血管弛緩因子(EDRF=NO)の発見以来,血管内皮細胞自体に存在する血管トーヌス調節機構の研究は多くの関心を集め,その後NO以外にも多くの血管作動性物質の存在することが判明してきている.そのなかでエンドセリンは,1988年,Yanagisawaら1)により,ブタ血管内皮細胞の培養上清から内皮由来血管収縮物質として単離されたもので,強力な血管収縮作用をその特徴とする.エンドセリンは構造的には21個のアミノ酸からなる生理活性ポリペプチドで,発見当初より,その特性から様々な心血管系疾患との関連が注目されてきた.特に虚血性心疾患においては,心筋梗塞や冠攣縮性狭心症例で血中エンドセリン濃度が上昇していることがわかり2,3),冠スパスム,心筋梗塞における関与や,さらには動脈硬化の進展,冠動脈形成術後の再狭窄などの病態におけるエンドセリンの重要性が推測されてきている.実験的にも動物モデルにおいて,後述するように心筋の虚血・再灌流による血中および組織中のエンドセリン濃度の増加,細胞のエンドセリン感受性の上昇4),さらにはエンドセリン受容体のup regulation5)などの報告があり,これらの変化が二次的に心筋梗塞時の組織障害の拡大に関与している可能性が確認されるに至って,病態生理学的に,また心筋梗塞治療の可能性からもますます注目されている.
本稿では,心血管系におけるエンドセリンの生理学的・病態生理学的意義について概説したうえで,特に虚血性心疾患におけるエンドセリンの心筋障害作用,さらには,種々のエンドセリン拮抗薬を用いた場合の心筋保護の可能性について,最近の知見をまじえて概説する.
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