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はじめに
ナトリウム・グルコース共役輸送体(sodium glucose cotransporter:SGLT)2阻害薬に抗心不全作用および腎保護作用があることは強固なエビデンスを背景として臨床的に確立しているものの,そのメカニズムについては未解明な点が多く残されている。SGLT2阻害薬が心不全の抑制に有効性を発揮するメカニズムについてはこれまでにさまざまな仮説が提唱されているが,それらは「血行動態に対する作用」と「代謝に対する作用」に大別される。前者については,SGLT2阻害薬の投与早期から心不全に対する有効性が顕性化するのは前負荷・後負荷の軽減が主要なメカニズムであるため,ということが根拠となっている。具体的には,SGLT2阻害薬を投与すると腎機能の改善や交感神経活性の抑制が起こり,それに引き続いて心保護作用が発揮されるものと想定されている。後者については,SGLT2阻害薬の投与によってもたらされる多面的な代謝改善作用が相まって心保護作用が発揮されている,とする考え方である。このことを示唆する事象として,SGLT2阻害薬を内服している患者では,血中ケトン体の上昇,赤血球数の増加,血清尿酸値の低下が認められるとの報告がある。これらの変化は,それぞれSGLT2阻害薬の投与による栄養と酸素の相対的欠乏状態の発生および酸化ストレスの低減を反映していると考えられている。実際,2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬を対象とした心血管アウトカム試験の媒介分析によると,SGLT2阻害薬が心不全の入院リスクおよび重大な腎イベントのリスクを低下させていたことの統計的決定因子の一部が,ヘモグロビン値の上昇と尿酸値の低下であることが示されている1)。
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