特集 輸液・ボリューム管理
Part 2 各論
【コラム】輸液プロトコルの有用性—医療の標準化と個別化
髙場 章宏
1,2
,
川上 大裕
3
Akihiro TAKABA
1,2
,
Daisuke KAWAKAMI
3
1神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター
2JA広島総合病院 救急・集中治療科
3神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科
pp.446-455
発行日 2017年4月1日
Published Date 2017/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200396
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2001年Riversら1)が,公表したearly goal-directed therapy(EGDT)は,それまで確立した管理法がなかった敗血症性ショックの死亡率を劇的に改善する方略として,世界に大きな影響を与えた。しかし,近年大規模な追試2〜4)が複数行われ,EGDTは通常治療usual careと比べて生存率を改善しないことが示され,Surviving Sepsis Campaign Guideline(SSCG)20165)ではその姿を消すことになった。
EGDTのようなプロトコル化された循環マネジメントは,もはや有益ではないのだろうか?それとも,我々はプロトコル・アルゴリズムを使用し続けてもよいのだろうか?
本コラムでは,主に敗血症と周術期の循環管理に関連したプロトコルを題材として,プロトコルとの向き合い方について考察する。キーワードは「標準化」と「個別化」である。
Summary
●プロトコルによる「標準化」は,意思決定の負担を軽減するとともに,標準的治療からの逸脱を防ぐなどのメリットがある。一方,管理の個別性がなくなるといったデメリットも存在する。
●敗血症のような異質性が高い疾患において,すべての患者に有益なプロトコルを作成することは困難である。
●多様な患者に「個別化」した管理を提供するためには,患者を「層別化」してエビデンスを創出することが有用である。
●医療者の行動における標準化と個別化の共存に関して,組織の意思決定プロセスを見直すことが有用であるかもしれない。
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