特集 輸液・ボリューム管理
Part 2 各論
【コラム】ボーラス輸液と維持輸液の違い—ボーラス輸液の生理学的背景と,そのメリット・デメリット
加藤 良太朗
1
Ryotaro KATO
1
1板橋中央総合病院 内科(総合診療科)
pp.456-462
発行日 2017年4月1日
Published Date 2017/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200397
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「血圧を上げるならボーラスだ!」
筆者が米国でインターンだった頃,先輩レジデントにそう叩き込まれた。“ボーラス”とは,輸液の急速静注のことである。急性腎傷害患者など,プラスバランスにするためなら,維持輸液の量を増やすだけでもよい。しかし,低血圧患者の蘇生にはボーラス輸液を行う。筆者の知るかぎり,欧米では今でもこれが輸液に対する一般的な考え方である1)。集中治療領域においても「輸液チャレンジ」という名称でボーラス輸液は頻繁に行われており,例えば,Surviving Sepsis Campaign Guidelines(SSCG)2012においても,その重要性が強調されている2)。
ところが,我が国では手術室以外でボーラス輸液を目にすることは,ほとんどない。なぜ,欧米ではボーラス輸液が頻繁に行われるのだろうか?それは果たして患者にとってよいことなのだろうか?「急いては事を仕損じる」というが,ボーラス輸液による害はないのだろうか?
Summary
●ボーラス輸液には生理学的な裏づけがあり,欧米の集中治療領域では頻繁に利用されている。
●ボーラス輸液は臓器灌流の早期改善を可能にするばかりではなく,輸液チャレンジとして,数値的評価に基づいた安全な輸液治療も可能にする。
●ただし,ボーラス輸液と維持輸液を直接比較した唯一の臨床試験では,その安全性に疑問が投げかけられた。
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