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本稿で論じるのは,いかに輸液を投与するかではなく,“肺を軽くする”ためにいかに不必要な輸液をしないか,利尿や透析によりいかに体外に水分を排出するか,である。
急性呼吸窮迫症候群acute respiratory distress syndrome(ARDS)患者の大規模無作為化比較試験であるFACTT1)において,輸液量を制限し利尿を促進させる管理conservative strategyを行うことで,酸素化が改善し,人工呼吸期間が短くなると報告されている。つまり,全身の水分量をできるだけ少なくすることで肺の水分量も減り,酸素化が改善し,それにより人工呼吸期間が短くなると考えられている。しかし,肺を軽くするために輸液を制限し利尿を行えば,他の臓器に障害を起こす可能性がある。よって「急性呼吸不全の輸液管理」として本稿で論じる命題は,“いかに他臓器に障害を起こすことなく,肺を軽くするか”である。
Summary
●ARDS患者に対して,輸液量を制限し利尿を促進させる管理conservative strategyを行うことで,酸素化が改善し,人工呼吸期間が短くなる。
●急性呼吸不全の輸液管理は,血行動態不安定期,血行動態安定期,人工呼吸器離脱期のフェーズに分けて考える。
●血行動態不安定期では,輸液反応性の指標(特にSVVやPPVといった動的指標やPLR)を用いながら不必要な輸液を投与しないように管理することが重要である。
●血行動態安定期に入ったら,CVPやPAWP,超音波所見などを駆使しながら,臓器障害を起こさない範囲で積極的に除水を行い(肺を軽くして),早期の呼吸器離脱を目指していくことが重要である。
●人工呼吸器離脱期では,BNPは体液管理における1つの参考所見となるかもしれない。
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