Japanese
English
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手術後の水分食塩貯留
On the Mechanism of Postoperative Salt Intolerance
澁澤 喜守雄
1
,
稻生 綱政
1
Kishuo SHIBUSAWA
1
,
Tsunamasa INO
1
1東京大學福田外科教室
1Surgical Dept. of Tokyo Univ. Medical School
pp.505-510
発行日 1951年11月20日
Published Date 1951/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200917
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まえがき
ふつう外科手術ののち第3日ごろまでは明かに食塩の尿中排泄が減少し,またしたがつてナトリウムの細胞外貯留,細胞外液相拡張が著明である.術後,リンゲル液または食塩水を多量に投與すれば,いたずらに細胞外液相を拡張せしめ,肺合併症などを招くにすぎない1).したがつてColler2)は術後食塩水を與えてはならないといゝ,またわれわれは,食塩平衡から計算された量を添加しつゝブドウ糖を主として,3日間の蓄積平衡を30〜50cc/kg正に保たれる程度の水分補給を理想的とすべきであろうことを強調した3)4).電解質が全く添加されなければ,一方ではhypotonc syndrome5)などを,他方では低カリ血症などを招来する危險があるからである6).
このような術後数日の著しい水分食塩の貯留は副腎皮質内分泌の亢進に皈するであろうことが想像され,Har—dy7)8)はエオジン好性細胞の消長からこれを窺い,またColler9)は高温高濕度の実驗による汗の電解質濃度の変化からこれを帰納しているのである.しかしながら,すでにわれわれが報告10)したように,胃切除・胆嚢剔除・直腸切断術などでは,17ケトステロイド,11オキシステロイドいずれから見ても手術当日あるいは手術第1日の副腎皮質内分泌は明かに術前より低下しているのである.このような副腎皮質機能低下にも拘わらず,これら手術後の水分食塩貯留はすでに当日からきわめて顯著である.
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