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深部静脈血栓症deep vein thrombosis(DVT)と肺塞栓症pulmonary embolism(PE)を合わせて,静脈血栓塞栓症venous thromboembolism(VTE)と呼ぶ。PEの多くは特に下肢DVTを塞栓源としているとされ,PEと診断された患者の約70%にDVTが認められる1)。また,VTEのリスクは,疾患や手術,患者要因により低,中,高,最高リスクの4段階に分類され,例えば,最高リスクの患者では下腿型DVTが40〜80%,中枢型DVTが10〜20%に発症し,症候性PEは4〜10%,致死性PEは0.2〜5%に発症する2)とされる。ICU患者は,VTE発症のリスクが高いことが多く,ICUでのVTE予防および評価と治療は忘れてはならない大切なルーチンの1つである。本稿では,超音波診断による血栓の評価について,下肢DVTの診断を中心に解説する。
Summary
●ICUにおける深部静脈血栓症(DVT)評価では,非侵襲的かつベッドサイドで繰り返し施行可能な下肢静脈エコーは第一選択となる。
●下肢DVTは中枢型と下腿型に分けて評価を行う。中枢型DVTは肺塞栓症に関連が強く,臨床上,より重要である。
●ICUでの評価には時間的制約を伴うため,標準的な検索手順を基本としながらも,観察が難しい部分に固執せず,見えるところから評価する。
●DVT診断では,安静時評価のほか負荷法(静脈圧迫法,血流誘発法)での評価が有用である。
●DVTの検査前確率が低い患者,また時間的制約のある緊急時などでは,まず中枢側(腸骨静脈,膝窩静脈)のみの評価(proximal US)を行う。
●検査前確率が中等度または高い患者では下肢全体のエコー(whole-leg US)も考慮される。
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