特集 ICUエコー
Part 2 Intensivistに求められる超音波診断
循環器系
12.急性肺塞栓症の心エコー所見
福井 悠
1
,
則末 泰博
2
Yu FUKUI
1
,
Yasuhiro NORISUE
2
1東京ベイ・浦安市川医療センター 循環器内科
2東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科 集中治療部門
pp.117-124
発行日 2017年1月1日
Published Date 2017/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200357
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急性肺塞栓症は肺循環を悪化させ,換気血流比不均等V/Q mismatchにより低酸素血症をきたし得る。さらに,肺血管抵抗の急激な上昇は右室拍出量減少とともに左室前負荷の急激な低下をきたし,左室拍出量減少によりショックをきたし得る。
V/Q mismatchに伴う変化は検出不能であり,心エコーの限界といえるが,肺血管抵抗上昇に伴う一連の変化は経胸壁心エコーによって右心負荷所見(もしくは右室機能不全)として検出され得る。血圧低下や心停止などの重大な帰結をもたらす肺塞栓症は,閉塞性ショックに至る過程で基本的に右室機能不全を合併していると考えてよい。また,この右室機能不全の所見は短期予後と密接に関連しており,診断だけではなく治療方針の決定にも有用である。本稿では,心エコーによって得られる右室機能不全の所見について,できるだけ臨床に役立つ形で説明する。
Summary
●心エコーで,急性肺塞栓症による右室機能不全の所見が描出できる。
●心エコー上,右室機能不全の所見が認められなければ,ショックの原因としての急性肺塞栓症の可能性は著しく低い。
●血行動態は安定しているが右室機能不全および心筋障害の所見が認められるいわゆるsubmassive PE,またはintermediate risk PEのなかには,抗凝固療法のみでまったく問題のない患者と,数分後には心停止をきたし得る患者が含まれており,心エコー所見はさらなるリスクの層別化に有用である可能性がある。
●急性肺塞栓症はあくまで右心系の拡張をきたす原因疾患の1つであり,常に他の疾患の鑑別を念頭におくことが重要である。
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