特集 管/ドレーン
第5章 別な視点からの“管”
【コラム】膿瘍ドレナージ
荒井 保典
1
Yasunori ARAI
1
1聖マリアンナ医科大学 放射線医学講座
pp.658-673
発行日 2016年7月1日
Published Date 2016/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200306
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
膿瘍は,何らかの原因の結果として生じる病態である。さまざまな症状を引き起こすため治療が必要であるが,膿瘍への直接治療で改善できるのは惹起された症状のみで,原因の診断と,それに対する治療が最終的にカギをにぎる。そのことをまず念頭におく必要がある。
膿瘍は血流がなく,抗菌薬など内科的治療だけでは治癒が難しいことが多々ある。その場合には排膿が必要であるが,経皮的なドレナージチューブ挿入は比較的低侵襲で有効性の高い優れた治療である。しかしながら,膿瘍ごとに使用する穿刺ガイドのモダリティ,穿刺経路やデバイスの選定,その後の管理などが異なり,臨機応変な対応が求められる。また,外科的排膿のほうが適した症例もあり,どちらが優れているというものではない1)。患者の状況によって,適した方法を選択することが重要である。
Summary
●臨床的に炎症による病態が存在することが重要で,炎症所見がなければ液体貯留があっても,必ずしもドレナージの適応とはならない。
●抗菌薬などの内科的治療に抵抗性の膿瘍は適応となるが,経皮的穿刺ルートがない場合には,外科的治療を考慮する必要がある。
●腸管や神経,血管といった穿刺が禁忌となる臓器を避けてルートを選択し,穿刺を行う。実質臓器を経由する場合は十分な距離を通過するようにルートを選択する。
●穿刺ガイドのモダリティも進歩し,各種チューブも豊富となったが,患者の安全性を担保するために,個々の病態に応じた選択が重要である。また,可能ならば,ダイレータは避けるほうがよい。
Copyright © 2016, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.