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重症外傷をはじめとした外科救急疾患のマネジメントは,過去20年間で大きく進歩してきた。そのなかでも患者の予後改善に大きく影響したのが“ダメージコントロール手術”の概念である1)。それ以前は,開腹術後には腹壁を閉鎖するのが当たり前であったのに対して,①外傷,その他の原因による重篤な腹腔内出血,②腹腔内重症感染症,③腹部コンパートメント症候群,などにより患者の全身状態が著しく悪化している症例において,腹壁(筋膜)を閉鎖しない,いわゆる“open abdomen”の状態でのICU管理が行われることが多くなってきている。open abdomen症例では一時的腹部閉鎖temporary abdominal closure(TAC)が施行され,近年ではTACの方法として,陰圧閉鎖療法negative pressure wound therapy(NPWT)が用いられる例が大部分となっている。
本コラムでは,集中治療医に必要なopen abdomen症例の実際に加えて,壊死性軟部組織感染症や熱傷などにも頻繁に用いられるNPWTの使用方法,実際に管理するうえでのピットフォールについて述べる。
Summary
●open abdomenの症例に対する一時的腹部閉鎖法(TAC)が発展し,その多くに陰圧閉鎖療法(NPWT)が用いられている。
●TACは,市販のキットもあるが,自作することも容易である。
●TACの症例をICUで管理する場合は,申し送り時に,適応,方法,NPWTの有無,次回開腹手術予定を外科医に確認し,創部の状態と排液の性状を観察する。
●一般的なICUにおける合併症に加えて,NPWTに関連した腹部合併症は約15〜20%の症例で認められるため,NPWT施行決定と同時に最終的な腹壁(筋膜)閉鎖までの方針を立てる必要がある。
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