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BRCA遺伝子変異による乳癌発症高リスクと診断された某有名女優が,予防的乳房切除術したとのニュースがメディアを賑わせたのも記憶に新しい。また,我が国でも2011年には某社により次世代シーケンサ*1を用いたヒトゲノム完全解読サービスがすでに開始されている。このように,遺伝子解析に基づいた医療介入への関心が高まっている。一方,前出のような悪性腫瘍易罹患性における遺伝子の影響,いわゆる「癌家系」の存在は広く知られているが,多因子疾患である重症感染症で死亡することの遺伝性の強さが癌死よりも何倍も強い1)ことはあまり知られていない。そしてALI(acute lung injury)/ARDS(acute respiratory distress syndrome)などの多因子急性疾患でも遺伝的影響は少なからず報告されているが,臨床的に重視されていないのが実情である。本稿では,ARDSの発症および転帰への遺伝子多型の影響に関する既報を紹介し,今後の臨床応用への可能性につき考察する。
Summary
●遺伝子多型のALI/ARDS発症や転帰に及ぼす影響が示唆されている。
●ARDSに関する遺伝子多型としては,サイトカイン産生や細胞シグナル伝達に関する遺伝子が主に検討されており,敗血症関連遺伝子多型と共通するものが多い。
●ARDS関連遺伝子多型のゲノタイプ分布にも人種間格差が存在する。
●ARDSへの遺伝子多型の影響を確定するには,より洗練されたデザインで,より多くの症例を対象とした,複数のコホートでの検討を要する。そして最終的には表現型の検証を行う必要がある。
●遺伝子多型情報をもとにしたARDS治療の可能性としては,近年までにエビデンスが得られていないものも含めたARDS治療薬の個別化投与や,人工呼吸器管理期間の予測に基づいた気管切開時期の決定,ICU施設の資源有効利用への応用なども挙げられる。
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