特集 網膜硝子体診療update
Ⅳ.注目の疾患
1.加齢黄斑変性
遺伝子多型
本田 茂
1
1神戸大学大学院医学系研究科器官治療医学講座眼科学分野
pp.212-216
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102490
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遺伝子変異と遺伝子多型
遺伝子変異(mutation)という言葉は現在ではよく理解され,臨床の場でも当たり前のように使用されているが,遺伝子多型(polymorphism)という言葉は耳慣れない方も多いかもしれない。「遺伝子変異とどこが違うのか」とはよく耳にする質問である。「遺伝子変異」とはすべての遺伝子構造(塩基配列)の違いを指し,単一塩基置換,欠失,挿入,遺伝子融合などを含む概念である。一方の「遺伝子多型」とは,最も頻度の高い変異あるいはアリル(対立遺伝子)が99%以下の状態を表す。すなわち,頻度の低い変異・アリルの合計頻度が1%以上ある状態である。
なぜ1%なのか。世代ごとに絶えず生じる新しい突然変異の多くは自然淘汰によって集団中から除去されることから,その平衡頻度が理論的に計算される。この平衡頻度より高い値が1%という値であり,これを「多型」の基準としているのである。つまり,「遺伝子変異」の一部が「多型」を示すともいえる。遺伝子多型がみられるということは,何らかの機序により集団中でそれらの変異の頻度が上がり,何世代にもわたって維持されてきたことを意味する。
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