今月の主題 遺伝子多型と疾患
巻頭言
遺伝子多型と疾患
池田 康夫
1
Yasuo IKEDA
1
1慶應義塾大学医学部内科
pp.1491-1492
発行日 1998年11月15日
Published Date 1998/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916890
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- 文献概要
テクノロジーの著しい進歩によって,DNA配列を直接的に決定することが比較的容易になり,その結果,ヒトゲノムは非常に多数のDNA多型を持つことが次第に明らかになってきた.DNA多型とはある集団でDNA配列の変異が1%以上に生じており,しかもその集団の多数の人と異なる場合と定義される.逆に言えば,ある集団の100人について,全員が同じDNA配列を示した場合,その遺伝子は多型でないと言う.機構からみれば多型は突然変異であり,対象とする集団によってその配列の変異は突然変異となったり,多型と定義されたりすることもあり得る.多型の多くは明らかな表現型の違いをもたらさないが,転写機構,mRNAの安定性,蛋白構造の変化などを通じて,その因子の量的,質的な微妙な変化をもたらす可能性がある.
今,なぜ,遺伝子多型が注目されているのであろうか? これまで,先天性疾患の遺伝子異常については多くの知見が蓄積され,遺伝的疾患の分子生物学的解析に著しい進歩がもたらされたが,動脈硬化,高血圧,糖尿病,癌など非常に頻度の高い疾患においても罹りやすさ,病型などにおいても遺伝的背景の存在が示唆されており,その理論的な裏付けを求めようとする学問の流れが技術革新とあいまって加速されているのである.
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