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はじめに
Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)のガイドラインによると,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)の定義は「完全には可逆性でない,慢性進行性の気流制限を特徴とする疾患」であり,それには有害な粒子やガスに対する肺の異常な炎症性反応が関連している1).最も多いCOPDの原因はタバコ喫煙である.
近年報告された無作為抽出による全国調査の結果では,40歳以上の成人男性の13.1%,女性の8.5%が肺機能検査における1秒率70%以下であり,日本全国では潜在患者を含め530万人がCOPDに罹患していると推測された2).米国においては約1,000万人がCOPDと診断され,潜在患者を含めると推定患者数は約2,400万人にのぼるとされた3).また,世界的にみてもCOPDは現在の死亡原因の第4位であり4),今後の20年間は有病率,死亡率ともに上昇すると見込まれ,2020年には第3位になると予想されている5).
COPDの気流制限は小気道の病変(細気管支炎)と肺実質の破壊(肺気腫)とが混合して起こっており,気流制限へのそれらの相対的な寄与率は人によって異なる1).かつて用いられていた「慢性気管支炎」の病名はGOLDでは用いられていない.しかしながら,「3カ月以上継続する咳嗽と喀痰が連続して2年以上続く」という中枢気道症状を呈する患者がCOPD患者の一部を占めることは明らかである.また最近,中枢気道壁の肥厚をCTで計測したものと,末梢気道壁の肥厚を病理で計測したものとが相関するというデータが出された6).これらのことから,COPDには気腫病変が優位なものと気道(気管支~細気管支)病変が優位なものとが存在することを前提として,病理学的変化の違いをもとに病態を論ずるのが適切であろうと思われる.
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