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ARDS(acute respiratory distress syndrome)に対して今まで多くの薬物療法の有効性が検討されてきたが,残念ながら現時点で有効性に関してコンセンサスが得られている薬物治療は存在しない。
本稿では,現在までに行われたARDSに対する薬物治療の歴史を振り返る。どのような薬物に対して検討が行われ,どのような結果であったのか。そして,今後どのような薬物治療が期待されているのか。臨床・研究において,今後の課題も含め考察する一助になれば幸いである。なお,各研究内で急性肺傷害acute lung injury(ALI)と表現されている病態に対して,本稿ではBerlin definitionに倣いARDSと表現した。
Summary
●ARDSに対して今まで多くの薬物療法の有効性が検討されてきたが,残念ながら現時点で有効性に関してコンセンサスが得られている薬物治療は存在しない。
●ステロイド:ARDS発症前後の高用量短期投与の有用性は認められず,むしろ有害な可能性がある。ARDS発症晩期の中等量長期投与は死亡率を改善しなかった。ARDS発症早期の少量長期投与は呼吸機能を改善させる可能性がある。
●シベレスタット:諸外国では大規模無作為化試験の結果から無効なだけでなく有害となり得る薬物という認識である。国内の有用性を示す臨床研究は科学的根拠が不十分である。
●NO吸入:一時的に酸素化を改善させたが,死亡率や人工呼吸器使用期間には影響を与えなかった。腎障害を増加させる可能性が示唆されている。
●サーファクタント:成人に対する有用性は示されていない。
●スタチン:大規模無作為化比較試験で有用性は認めなかった。腎障害・肝障害を増加させる可能性がある。
●活性化プロテインC:大規模無作為化比較試験で有用性は認めなかった。
●抗凝固薬:近年注目を浴びているが,まだ研究段階である。
●β刺激薬:有用性は認めず,むしろ死亡率を上昇させる可能性がある。
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