病院の広場
過去・現在・未来
砂原 茂一
1
1国立療養所東京病院
pp.17
発行日 1969年3月1日
Published Date 1969/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203580
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結核の治療研究については,今日ではいわゆるcontrolled trialが常識となっているが,その国際的な中心の1つは,インドのマドラス結核化学療法センターである.このセンターの研究の1つに,結核の入院治療と外来治療の比較がある.開放性の結核患者を無作為に2群に分け,一方は入院させ,一方は在宅のまま化学療法を行なって,その治療成績を比較している.外来治療の場合でも薬の与え方はきわめて厳重で,必ず医師や看護婦立ち合いのもとで飲ませているが,この比較実験の結果は両群まったく同じであった.そこでインドの結核学者やこれを援助したイギリスの研究者は,化学療法の発達した今日では,結核治療に安静も栄養もまったく不要で,入院の必要もまったくみとめられないと主張している.病院や療養所を建てるのは不経済,非能率な話だというのである.
一般的にいえば,臨床医学が大型化し,診療手技が複雑となって,むしろ医療の中心は病院にうつってきたと考えられているが,もう一段進歩すると,今度はいろいろな病気について入院不要論が有力になるのかもしれない.
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