特集 ARDS Berlinその後
回答1:筋弛緩薬を使用:抜管または気管切開後に離床を開始
後藤 安宣
1
,
則末 泰博
2
Yasunobu GOTO
1
,
Yasuhiro NORISUE
2
1市立奈良病院 集中治療部
2東京ベイ・浦安市川医療センター 呼吸器内科・集中治療科
pp.36-38
発行日 2015年1月1日
Published Date 2015/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200126
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■どんな設定にしても1回換気量が
多くなりすぎるときはどうするか?
筋弛緩薬を使用する
現在推奨されているARDSの人工呼吸器管理の要点は,適切なPEEPを設定し,1回換気量を抑えた低容量換気を行い,プラトー圧を30cmH2O以下に抑えるという肺保護戦略に要約される1〜3)。しかし,実臨床においては,1回換気量を抑えることが非常に困難な症例に遭遇することは珍しくない。
提示された症例では,基礎疾患としての敗血症・腹膜炎,7日以内発症の急性呼吸不全,酸素化の低下,胸部X線における両側のびまん性浸潤影,利尿薬による改善が乏しいことなどから,2012年に発表されたBerlin definition4)の診断基準における重症ARDSの基準を満たすと考えられる。
本症例では,pressure controlで吸気圧を下げても換気量は10mL/kg以上となり,volume controlへ変更後も,吸気時の気道内圧の陰圧化が生じ,さらに二段トリガーによって,結果的に1回換気量増加を認めている。鎮静や鎮痛も効果がないようである。以上のことから,本症例は自発呼吸による呼吸努力が強すぎる状態である,と考えられる。筆者らは,このようなケースでは自発呼吸を温存するのではなく,筋弛緩薬を使用した人工呼吸器管理を行いたいと考える。その理由は3つある。1つ目はvolutraumaを防ぐための低1回換気を達成すること,2つ目はプラトー圧だけではなく,“経肺圧(Ptp:transpulmonary pressure)”を考慮した呼吸管理を実践すること,そして3つ目は“pendelluft現象”による肺損傷の可能性を考慮に入れることである。
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