特集 ARDS Berlinその後
回答2:臨床工学技士から:吸気努力と肺気量の適正化が可能ならば,自発呼吸を温存し,換気量変動は容認
髙𣘺 由典
1
Yoshinori TAKAHASHI
1
1杏林大学医学部付属病院 臨床工学室
pp.39-41
発行日 2015年1月1日
Published Date 2015/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200127
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呼吸不全の治療に人工呼吸は欠かすことのできない治療手段の1つであるが,人工呼吸自体が肺損傷を引き起こし〔人工呼吸器誘発肺傷害ventilator-induced lung injury(VILI)〕1),生命予後を悪化させる一因ともなり得るため,近年の人工呼吸器管理戦略はVILIのリスク軽減を目的とした肺保護換気が基本となる2)。VILIは,①肺胞の過伸展(volutrauma)3),②肺胞の虚脱と再開通が繰り返されることにより生じた剪断応力(atelectrauma)4〜6),③細胞の炎症反応(biotrauma)7)などで惹起される,と考えられている。肺保護換気には,1回換気量やプラトー圧の制限,肺胞虚脱予防のPEEPなどがあるが2),特に1回換気量制限はARDS/非ARDSともに有効性が示されており8,9),その評価はほぼ確立している。
また,近年では自発呼吸を温存した人工呼吸器管理が広く用いられている。自発呼吸を温存することで機械換気や鎮静・筋弛緩薬による弊害を抑制できると考えられており,酸素化能の改善や人工呼吸期間の短縮といった自発呼吸の有用性を示唆する報告がある10〜14)。しかし,自発呼吸温存と1回換気量制限の両立は,患者-人工呼吸器非同調patient-ventilator asynchronyや1回換気量の制限が達成できないなど,困難であることが少なくない。
本稿では,「どんな設定にしても1回換気量が多くなりすぎるときはどうするか?」に回答する。
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