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ARDS(acute respiratory distress syndrome)は,集中治療室では遭遇する頻度の高い疾患であるが,重症化すれば依然として死亡率は20%を超える1)。過去にさまざまな治療戦略が検討され,有用性を示せず消えていった。そのなかで強いエビデンスに支えられ,現在は標準とされている治療戦略が「肺保護戦略」である。肺保護戦略という言葉は明確な定義をもたないが,その根底にある考え方は「これ以上肺を悪化させない」,ということである。本稿では,①人工呼吸器関連肺傷害について考察したのち,②ARDSにおける肺保護戦略,特に低容量人工呼吸器管理low tidal strategyを中心に検討し,③ARDS患者に限らないすべての人工呼吸器管理患者におけるlow tidal strategyの妥当性について検討する。
Summary
●ARDSの治療において,肺保護換気はエビデンスのある治療戦略であり「これ以上肺を悪化させない」という考えが根底にある。
●人工呼吸器関連肺傷害の原因として「過伸展」と「虚脱」が重要である。
●「過伸展」に対してlow tidal strategy,「虚脱」に対して適切なPEEPを使用する。
●適切なPEEPについてははっきりしないが,中等症以上のARDSにはhigh PEEPがよい可能性が示唆される。しかし,それ以外の患者では予後を悪化させる可能性があるため注意する。
●すべての人工呼吸器管理患者にlow tidal strategyを行う強いエビデンスはないが,ARDS発症の高リスク患者の場合は考慮する。
●single-organではなく患者の全体像と原疾患を把握したうえで「全身管理のスペシャリスト」としての矜持をもってARDSの治療にあたる。
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