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日本国内において,一般市民が自動体外式除細動器(AED)を使用できるようになったのは2004年のことであり,本年でちょうど10年となる。AEDの普及は院外心停止患者の心拍再開(ROSC)率,社会復帰率を劇的に改善した1)。この10年では,一般市民への心肺蘇生法(CPR)の普及,蘇生に関するガイドラインの改訂もあり,社会復帰率の向上に寄与していると考えられる。
心停止患者の予後評価あるいは治療成績として扱われることが多いのは,ROSC率や生存退院率だが,これらは長期予後に対して短期予後と表現される。長期予後として調査研究が行われる場合は,生存退院した患者数を母数として,ある一定期間後の死亡率,生存率が調査される。1年,3年,5年,10年生存率や平均生存日数などが指標として用いられる。単純な生存率だけでなく,ROSC後の後遺症,すなわち神経学的障害の程度はもちろん重要な評価項目だが,退院後に神経学的機能を追跡調査するのは容易ではなく,報告は少ない。
日本国内では,2005年から総務省消防庁がウツタイン様式に基づいた調査を行っており,国際的にも注目される大規模調査となっている。
Summary
●日本国内では消防を通じて集計されている救急蘇生統計(日本版ウツタイン統計)が心停止についての膨大なデータを蓄積している。転帰については短期転帰(1か月後)までしかデータがないが,2009年の時点で全心停止に対する1か月後の社会復帰率は2.8%であり,目撃のある心室細動(VF)症例に限れば20.6%である。
●生存退院症例の長期転帰は,年々改善されつつある。
●心拍再開後(生存退院後)の5年生存率(5年生存者数/生存退院者数)は44〜77%と,地域,年代によってばらつきが大きいが,やはり心原性心停止,VF発症の心停止症例の転帰がよい。
●心停止後,生存退院できた患者の長期転帰は,同年齢で同程度の疾患をもつ非心停止患者と比較しても大きな差はない。
●心停止後患者の治療費は高額になるという印象が強いが,生存退院できた症例の獲得余命年数で考えると,他の疾患に比べて高額ではない。
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