徹底分析シリーズ 麻酔科医の知らなければいけない免疫
長期予後と免疫:長期予後を改善するための方策
城戸 幹太
1
,
横山 武志
2
Kanta KIDO
1
,
Takeshi YOKOYAMA
2
1東北大学病院 歯科麻酔疼痛管理科
2九州大学大学院歯学研究院 口腔生体統御学分野
pp.856-861
発行日 2009年9月1日
Published Date 2009/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100744
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従来,麻酔は周術期の短期的な全身管理と考えられがちであった。しかし,手術中の出血による低血圧が腫瘍再発リスクを増加させることが報告1)され,麻酔管理が免疫系に影響し,長期予後にかかわることが示唆された。さらに近年になって周術期管理が患者の長期予後にさまざまな影響を与えるという報告2,3)が相次いでなされ,麻酔管理と長期予後とのかかわりが注目されている。なかでも麻酔管理が免疫能に与える影響は,もはや麻酔科医にとって無視できない問題となりつつある(図1, 2)。
長期予後とはいつからいつまでのことを指すのか,生存率を評価する場合に悪性腫瘍手術後の再発や転移による死亡と心臓血管手術後における死亡を同列で論じていいのか,など厳密に定義するのが難しい面もある。また,周術期における免疫能の臨床的評価も困難がある。一般的には,インターロイキン(IL)-6やTNF-αなどの血中炎症性サイトカイン濃度の変化や,ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の数や活性を測定している報告が多い。
本稿では,周術期における麻酔・集中治療管理が患者の生命予後にどのような影響を与えるかということを考えてみたい。特に,麻酔管理のあり方と同時に長期予後に関係するといわれている薬物を中心に免疫学的観点から概説する。
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