特集 PCAS
Part 1 PCASの病態
3.心停止後に生じる心機能障害—発症早期からの適切な血圧管理が重要
白井 伸一
1
Shinichi SHIRAI
1
1小倉記念病院 循環器内科
pp.589-593
発行日 2014年10月1日
Published Date 2014/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200094
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心停止による一連の機能障害は,心停止後症候群post cardiac arrest syndrome(PCAS)という病態にて説明される。特に心停止後の心機能障害は心筋梗塞発症の際はもちろんのこと,冠動脈疾患のない患者においても発症し得る。
その本態は,心筋の気絶状態stunningであり,収縮能のみならず拡張能も障害された状態である。その結果として招来される心拍出量の低下だけでなく,アシドーシスならびに敗血症病態に類似した再灌流障害による血管拡張と相まって,全身灌流の低下を生じ得る。しかも,自然寛解を得ることが可能なことも多く,かつ昇圧薬への反応性を有していることから,心筋虚血の解除ならびに昇圧薬によって心臓自身,脳ならびに全身臓器へ血流を維持すること,さらに体温のコントロールを行うことが重要である。
Summary
●心停止後の心機能障害は心拍再開後から数時間以内に発症するが,一過性であり,回復傾向にある。
●輸液,昇圧薬に反応することがほとんどであるが,不応である場合の予後は悪いため,積極的な補助循環が必要である。
●発症2時間以内の血行動態は予後に影響するため,早期から十分な血圧のコントロールを行うことが必要である。
●心筋虚血は解除することが望ましい。
●心筋梗塞において,低体温療法は梗塞巣の減少に寄与するものであるが,冠血行再建時に低体温になっていれば予後良好の可能性がある。
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