特集 PCAS
Part 1 PCASの病態
2.中枢神経障害—脳は血流停止に対して脆弱な臓器である
内野 博之
1
,
原 直美
1
,
荻原 幸彦
1
Hiroyuki UCHINO
1
,
Naomi HARA
1
,
Yukihiko OGIHARA
1
1東京医科大学 麻酔科学講座
pp.577-588
発行日 2014年10月1日
Published Date 2014/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200093
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心停止後の患者の社会復帰を妨げているのは,虚血という脳血流cerebral blood flow(CBF)停止現象に対して,脳が脆弱な臓器であることが主たる原因である。本稿では「心停止」を想定したラットの前脳虚血モデルで得られた結果を中心に,脳蘇生における虚血性神経細胞死のメカニズムについて分子生物学的な観点からとらえ,脳保護におけるミトコンドリア機能不全の重要性について概略を述べる。
Summary
●同じ虚血時間でも細胞死を起こしやすい神経細胞を,“選択的脆弱性”または“易傷害性”を有するという。
●虚血より数日後から起こる細胞死を“遅発性神経細胞死”という。一過性の脳虚血時間が長時間になるに従い,その発現はより早くなる
●グルタミン酸-Ca2+説とは,細胞内Ca2+濃度の上昇がCa2+依存性酵素の活性化,膜構成成分の脂質の障害,ROSの産生,ミトコンドリア呼吸鎖の傷害とATP産生不全という過程を引き起こし,急性あるいは遅発性の神経細胞死が誘発されると考えるものである。
●Ca2+,フリーラジカル,PLA2などによってミトコンドリア内膜に非特異的な孔(pore)が開孔することで,ミトコンドリア膜透過性遷移現象が起こる。このようなミトコンドリア機能不全と神経細胞死の関連が強く示唆されている。
●アクアポリンと呼ばれる,多くの水分子の移動を可能とする孔が細胞膜にあることが証明され,脳浮腫に関連する水の移動に重要な役割を果たしていると考えられている。
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