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現代の心肺蘇生cardiopulmonary resuscitation(CPR)の礎は,主にSafarら1〜3)やKouwenhovenら4)により今から50年以上前に築かれた。特に,1960年はCPR元年として知られており5),これ以降現代の標準的CPRにつながる閉胸式心マッサージ(すなわち,胸骨圧迫)と人工呼吸を組み合わせたCPRが広く普及することになった。以後50数年の間にサイエンスとしての蘇生科学はめざましい進歩を遂げ,さまざまな工夫やシステム改変などの試行錯誤により,院外心停止の長期的な転帰は改善してきた。心停止症例の転帰改善の理由として,一般市民のかかわる病院前のコンポーネント(早期通報,バイスタンダーCPR,一般市民による除細動など)や,一次救命処置basic life support(BLS)や二次救命処置advanced cardiac life support(ACLS)などのCPRの手技そのものにかかわるコンポーネント(CPRの手順,胸骨圧迫対人工呼吸比,薬物投与アルゴリズムなど)の向上が指摘されている6〜10)。
しかし近年は,これらにとどまらず自己心拍が再開して入院したあとの包括的な集中治療が,心停止患者の転帰改善に寄与しているのではないかと注目されている11,12)。AHA(American Heart Association:米国心臓協会)ガイドライン20108)でも,従来4つの鎖の結合で構成されていた救命の連鎖chain of survivalに「統合的心停止後ケアintegrated post-cardiac arrest care」という5つ目の鎖が加えられた。本誌の今回の特集は,この5つ目の鎖,すなわち心停止の転帰改善における入院後の集中治療の役割に焦点を絞って企画を組んだ。今回の特集のテーマを一言で言えば「自己心拍再開後にインテンシヴィストに何ができるか?」である。
Summary
●自己心拍再開後の体温管理,早期冠動脈造影評価と治療介入をはじめとした包括的な全身管理,すなわち,心拍再開後の集中治療が転帰改善に寄与することが明らかになってきた。
●自己心拍再開後入院患者の転帰には,地域格差,病院間格差,そしてボリューム効果があることが示唆されており,心拍再開後の治療介入を積極的に行う施設に患者を集約化したほうが転帰が改善する可能性がある。
●これらを受けて2010年のAHAガイドラインでは,従来4つの鎖の結合で構成されていた救命の連鎖(chain of survival)に,あらたに「統合的心停止後ケアintegrated post-cardiac arrest care」という5つ目の鎖が加えられた。
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