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慢性閉塞性肺疾患(COPD)急性増悪は,ICUや一般病棟で頻繁に経験する疾患である。その薬物マネジメントとして,ステロイド,吸入β2刺激薬と並んでよく使用されるのは抗菌薬である。
COPD急性増悪は多くの場合,何らかの気道感染が引き金になる1)。気道感染は通常ウイルスまたは細菌により起こるが,COPD患者にかぎらず,一般的にウイルス性が圧倒的に多い。COPD急性増悪の原因としてウイルス性が細菌性よりも多いとする研究2)も存在するが,実際の日本における疫学は不明である。また環境や薬物など,他の原因もある。
それら非細菌性の増悪因子によって起きた急性増悪においては,抗菌薬を投与する意味は理論上はないはずだが,実際にはCOPD急性増悪のほとんどの場合で抗菌薬が使用されている3)。その理由としては,上気道炎または気管支炎においてウイルス性と細菌性とを区別するのがしばしば困難であることが挙げられる。
しかし,抗菌薬は重度の副作用が起こることもあり,またその乱用は耐性菌の出現にも関与する。COPD急性増悪=抗菌薬ではなく,個々の患者において抗菌薬が奏効する条件を満たすかどうか判断するべきである。
これはすべての疾患にいえることであるが,より効果的な治療を行い,無駄な治療を避けるために,治療選択の個別化personalizationを行うことは今後より重要になるだろう。そのためには,COPD急性増悪の研究において,どのサブグループが抗菌薬による治療効果がより高いかの解析が重要である。
本稿では,Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)のガイドライン4)と,その根拠となる論文を中心にレビューする。
Summary
●COPD急性増悪においては,以下の場合に抗菌薬の投与を強く考慮する。
・喀痰の膿性化(色が緑色または黄色)
・人工呼吸器の使用
・プロカルシトニン(PCT)またはC反応性タンパク(CRP)が著しく高値
・Gram染色で単一菌または優位な菌の検出
●喀痰膿性化が伴っていないCOPD急性増悪に対して抗菌薬を使うべきかは,現時点では肯定も否定もできるエビデンスはない。
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