特集 End-of-life
【コラム】高齢者医療とmedical futility―社会的コンセンサスを形成し,患者・家族の価値観にあった治療を目指す
金城 紀与史
1
KINJO, Kiyoshi
1
1沖縄県立中部病院 内科
pp.80-86
発行日 2012年1月1日
Published Date 2012/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100385
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【症例】
85歳の女性。8年前に脳梗塞で寝たきりとなり,施設入所。コミュニケーション不可。たび重なる誤嚥性肺炎のため,胃瘻を5年前に造設したものの,その後も肺炎で入退院を繰り返す。
本日,発熱と低酸素血症,尿量低下で施設から救急搬送された。収縮期血圧60mmHg,心拍数140/min,呼吸数40/min,体温39.4℃,SpO2 78%,胸部X線写真で右下葉に肺炎像とびまん性の肺水腫,血液検査でカリウム6.5mEq/L,クレアチニン4mg/dL。
救急当直医のあなたは誤嚥性肺炎による敗血症性ショック,多臓器不全(ARDS,腎不全)と診断した。高齢で認知機能低下,ADL低下の著しいこの患者に,挿管,人工呼吸器,昇圧薬,透析といった積極的治療をすべきかどうか逡巡したあなたは,家族に厳しい病状を説明し,今後の治療方針を話したところ,「できることをすべてやってください」と言われた。あなたはしぶしぶ集中治療を開始するが,48時間後に患者はICUで亡くなった。
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