特集 外傷
【コラム】多発外傷に合併した四肢外傷に対する治療戦略―多発外傷患者における整形外科的手術のタイミング
松岡 哲也
1
Tetsuya MATSUOKA
1
1大阪府立泉州救命救急センター
pp.548-551
発行日 2010年7月1日
Published Date 2010/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100323
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外傷初期診療において,優先すべき目標は「防ぎ得た外傷死preventable trauma death(PTD)」を回避することである。さらに,この目標を達成しつつ「防ぎ得た機能障害preventable disability」の回避に努めることも重要である。したがって,四肢外傷を合併した多発外傷患者では,救命のために四肢機能を犠牲にせざるを得ない症例を的確に選別するとともに,一方で,可能なかぎり四肢の機能予後を最良にするための手段を講じなければならない。
四肢外傷は,主要血管損傷や神経損傷を含む軟部組織損傷と,骨・関節の損傷(骨折・脱臼)から成る。四肢外傷に対する治療としては,①出血のコントロール(止血),②虚血時間の短縮(血行再建),③感染の回避(創の洗浄,デブリードマン),④骨折・脱臼に対する整復固定,があり,この順番に優先順位が高い。ただし,これら4つの要素は互いに影響しあうため,すべてを考慮した戦略・戦術が必要になる。例えば,骨折部の不安定性の残存は,出血量の増加や末梢の循環障害,および感染の危険因子となる。
本コラムでは,多発外傷に合併する四肢外傷のなかで,主として頻度も重症度も高い大腿骨骨折の合併を想定し,救命と最良の機能予後を得るための治療戦略について解説する。
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