特集 外傷
2.多発外傷の取り扱い
齋藤 大蔵
1
Daizo SAITO
1
1防衛医科大学校 防衛医学研究センター 外傷研究部門
pp.457-465
発行日 2010年7月1日
Published Date 2010/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100315
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多発外傷の定義は明確には決まっていないが,日本救急医学会の用語集では,「身体を頭部,頸部,胸部,腹部,骨盤,四肢などと区分した場合に,複数の身体区分に重度の損傷が及んだ状態」を多発外傷としている。また,重症度を定量化する指標として,各身体部位の解剖学的損傷の程度で評価するAbbreviated Injury Scale(AIS)*1を用いて,AIS 3以上が複数の身体区分にある場合を「多発外傷」と呼ぶのが一般的と言える。各部の損傷は相互に関連しながら重篤化するので,臓器別・領域別に特化した診療科の分担的な治療では救命が困難であり,外傷診療においては初期の段階から多発外傷の可能性を念頭におき,総合的に判断して治療優先順位を決定することが重要である。そのためには部位ごとの確定診断や治療に固執せず,全身的緊急度を重視し,生命にかかわる損傷に対する処置を最優先する必要がある。多発外傷の取り扱いには外傷患者特有の系統立った診療が必要であり,防ぎ得た外傷死preventable trauma death(PTD)を発生させないことが何よりも大切である。
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