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はじめに
外傷は救急医療のなかでごくありふれた,太古から存在する疾患群であるが,系統立った診療システムが確立され始めたのは比較的最近で,防ぎ得た外傷死(preventable trauma death)の撲滅を目的に1970年代後半から米国で初期診療の標準化が開始された.このうねりは20年近く遅れて本邦にも波及し,現在多くの地域において,病院前はJapan Prehospital Trauma Evaluation and Care(JPTEC),院内における初期治療はJapan Advanced Trauma Evaluation and Care(JATEC)と呼ばれる標準プログラムに則った診療が実践されている.標準診療の教育啓蒙により治療成績の向上が期待されるが,その評価項目として防ぎ得た外傷死とともに防ぎ得た外傷後遺障害(preventable trauma disability:PTDA)の問題が提起された1).土田2)によると英国では四肢の手術が必要であった多発外傷の約50%に,防ぎ得たPTDAが発生していたという.ちなみに多発外傷とは身体を,頭部・頸部・胸部・腹部・骨盤・四肢などと区分した場合に,複数の身体区分に「重度の」損傷が及んだ状態をいう.
一方,昨年JATECの次の段階,即ち決定的治療の標準化を目的に,外傷専門医を対象とした外傷専門診療ガイドラインJapan Expert Trauma Evaluation and Care(JETEC)が発刊された(図).急性期リハビリテーションの重要性はJATECテキストにも記載されていたが,JETECテキストでは「社会復帰戦略」との題目で16ページを割いてより詳細に記述されている3).
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