特集 外傷
8.Damage Control Strategy
大友 康裕
1
Yasuhiro OTOMO
1
1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 救急災害医学
pp.539-547
発行日 2010年7月1日
Published Date 2010/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100322
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重症外傷診療においては「手術は遂行した(すべての損傷の修復は行った)が,患者は死亡した」という事態に陥ることがある。外傷診療の過程においては,外傷自体で被った侵襲だけでなく外科的治療によっても侵襲が追加される。やっかいなことに,外傷が重症であるほど,外科治療による侵襲も大きくならざるを得ない。このため,侵襲の総和が患者の対応限界を超え,冒頭で述べたような皮肉な結果となる。これは「根治的手術 definitive surgeryを遂行することこそ望ましい外科治療である」とする近代外科の考えが広く外科医に行き渡っていることによる。米国の外傷外科領域においても1990年代前半までは,すべての損傷に対する根治的手術を可及的早期に終了させるという考え方が一般的であった。しかし,「過剰な外科侵襲によって結果的に重症外傷を救命できなかった」ことを多くの外傷外科医が経験してきた1~3)。その反省のもとにdamage control strategy(DCS)という概念が提唱され,重症外傷に対する治療戦略として現在,世界的に広く認められている。
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