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持続的腎代替療法(CRRT)については,その目的を明確にし,最適の方法を選択する必要性を感じる。では,どのような方法が最も適しているのであろうか。現時点では正解にたどり着くのは困難なように思える。急性腎傷害(AKI)が,急性期疾患,特に敗血症のような重症病態で高率に惹起される1~4)ことは,集中治療医なら誰でも知っている。敗血症性AKIが惹起されれば,それに投入する医療資源も膨大になるし,救命率も決して高くない。集中治療医にとって腕のみせどころである反面,最もジレンマを感じる場面である。いつRRTを開始するべきかについては,古くは1961年からいくつかの報告5~9)がある。しかし,対象とした背景のばらつきや治療レベルの差から,早期導入が望ましいであろうとしかいえないのが現状である。
Surviving Sepsis Campaignにより敗血症の治療がガイドライン化10)されはしたが,そのなかでのRRTの位置づけは,持続的血液透析continuous venovenous hemofiltration(CVVH)は血行動態の安定しない症例に用いる(推奨度2D)*1,間歇的血液透析intermittent hemodialysis(IHD)とCVVHの効果は同等である(推奨度2B)の2項目のみであり,積極的なRRTの導入にまでは言及していない。ある意味において,我々の感覚との多少のズレがあるように思えてならない。
最近までAKIの定義すら統一されたものはなく,RRTの導入基準も施設によってまちまちであったように思われる。2004年にBellomoらがADQI*2グループからAKIの分類としてのRIFLE分類11)を提唱したことが国際基準統一への第一歩であると考えられる。さらに2007年にはAKIN*3よりRIFLE分類を一部改変した分類12)が提唱され,2008年にはRRT導入基準のコンセンサス13)も提示された。その有用性については現在各国で検討が進められている。世界中で行われているCRRTの効果を,やっと同じ基準で考えられるようになってきたといえる。
CRRTに関しては,その方法(拡散重視か濾過重視か,また置換量は?),使用する透析膜や濾過膜によって違った結果が得られることは周知の事実である。CRRTでの単純な腎不全物質(小分子量物質)の効率よい除去効果を探究した結果,現在の集中治療領域では,炎症性メディエータを含む中分子量物質の除去もその目的となってきたように感じられる。本稿では,AKIに対するCRRTの考え方から実際の治療モード,濾過膜での溶質除去様式の違い,前希釈法と後希釈法について概説する。
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