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[腎不全患者への投薬]
■血清クレアチニン値だけではわからないことがある
慢性腎臓病(CKD)の概念の普及とともに,年齢,性などをもとに,血清クレアチニン値から糸球体濾過量(GFR)(コラム1)を算出する式が報告されている。そこまで厳密にしなくても,血清クレアチニン値がGFRと逆相関するとして,CKD患者をフォローすることは日常診療の場で普通に行われている。腎不全患者への投薬というと,血清クレアチニン値から推定したGFRにより分類された表があって,それに従っていればよい,というイメージがあるかもしれない。では,血清クレアチニン値が1.0mg/dLの患者がいたとして,GFRがほぼ正常だといえるだろうか。この患者に投薬するとき腎機能正常者と同じにしていいのだろうか。答えは否である。なぜか。この血清クレアチニン値が定常状態にあるものかどうかがわからないからである。
極端な例を挙げれば,健常人から両側腎を摘出した直後の血清クレアチニン値は正常値とたいして変わらない。クレアチニンは体内でほぼ一定の割合で血中に放出されるから,腎臓という出口を失って血清クレアチニン値は経時的に上昇していく。ある瞬間では,2.0mg/dLかもしれないし,3.0mg/dLになるときもあるであろうが,この患者のGFRは,腎臓を失った時点から0であり,血清クレアチニン値の2や3を計算式に当てはめて得られるGFRの値をとることはない。これほど極端でないにしろ,急性腎不全の病態ではGFRは経時的に変化していると仮定しておくべきであり,血清クレアチニン値のみを根拠として,CKD患者を念頭においた投薬計画によって急性腎不全患者を管理することには落とし穴があると言わざるを得ない。
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