徹底分析シリーズ 研修医の素朴な疑問に答えます 薬あれこれ
腎不全になるとインスリンの必要量が変化するわけ
櫻井 裕之
1
Hiroyuki SAKURAI
1
1杏林大学医学部 薬理学教室
pp.746-747
発行日 2014年8月1日
Published Date 2014/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101102190
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筆者が腎臓内科に勤務していたころ,糖尿病科から糖尿病性腎症が進行した患者の紹介を受けた。詳細は記憶にないが,比較的急激に腎機能が悪化し,インスリンの必要量がどんどん減少し,筆者が診察したときにはインスリンを使用していなかった。糖尿病科医いわく, 「糖尿病は合併症が増えるばかりで辛い病気だけど,腎症が進むと糖尿病がよくなるんだね」 糖尿病性腎症のために透析になった患者のなかには,もはやインスリンを使わないような人も確かにいたが,それなりのインスリン投与を受けていた人もいて,そんな単純な問題ではないだろう。第一,腎不全になった途端に膵β細胞が突然再生するなんてあり得ないのでは,と感じていた。 この疑問に,薬理学的に答えてみたい。薬理学では,インスリン投与からその反応が出るまでの過程を,投与量から血中濃度までと,血中濃度から生体の反応へとの二つに分けて考える。前者は薬物動態学pharmacokinetics,すなわち,身体が薬物をどう処理するかの分析であり,後者は薬力学pharmacodynamics,すなわち,薬物に対する標的細胞の反応性の分析である。
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