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Surviving Sepsis Campaign Guideline 2008(SSCG 2008)では,臓器循環灌流量を維持する目的で平均動脈圧(MAP)を65mmHgに保つように推奨されている。一体この65mmHgはどこからきたのであろうか。
この65mmHgを示唆する2つの研究がある。1つは,septic shock の患者を輸液とノルアドレナリンを使用し,14人ずつ無作為にMAPを65mmHgに維持する群と85mmHgに維持する群に割り付け,代謝性の変数(酸素運搬量,酸素消費量,動脈乳酸値)と腎機能の変化を比較した。この2群では上記のアウトカムに関して有意な差が認められなかった1)。もう1つの研究では,10人のseptic shock患者を,ノルアドレナリンを使用し,同一患者でMAPを65,75,85mmHgに保ち,循環動態パラメータと局所的循環灌流パラメータ,代謝パラメータを測定した。MAPを65mmHgから85mmHgまで上げても,酸素代謝,尿量,臓器循環灌流などを有意に改善させなかった2)。
一方で,正常血圧性虚血性急性腎障害(normotensive ischemic AKI)という概念もある3)。腎臓での自己制御機構の破綻が起こり,MAPが65mmHg以上あるにもかかわらずGFR(糸球体濾過量)の著明な低下を認める。一例として高血圧患者の血圧が低下し正常値を示しているにもかかわらず,このような病態を示すような場合である。この65mmHgはあくまでも大まかな数値であり,強いエビデンスは存在しないことを認識し,患者個人に合わせた適切な組織循環灌流量を維持できるよう,MAPを最低65mmHg以上に保ち,生理学的な反応や血液検査などを総合的に評価することが重要である。
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