特集 Sepsis
8.薬物治療/抗菌薬を除く―(1)sepsisとステロイド
柳井 真知
1
,
藤谷 茂樹
1
Machi YANAI
1
,
Shigeki FUJITANI
1
1聖マリアンナ医科大学 救急医学
pp.303-308
発行日 2009年4月1日
Published Date 2009/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100195
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■ステロイド治療の歴史
1911年,sepsisで死亡した乳児の剖検所見で,両側の副腎の出血が認められ,sepsis患者における副腎障害への関心が喚起された。しかし,1980年代の3つの二重盲検無作為化比較試験(RCT)では,sepsis,septic shock患者への高用量ステロイドの有効性を示すことができなかった1~3)(表1)。Sprungらの研究1) ではsevere septic shockの患者59人をメチルプレドニゾロン群(30mg/kg,ショックが持続していれば同量再投与),デキサメタゾン群(6mg/kg,ショックが持続していれば同量再投与),プラセボ群に分け検討したところ,24時間以内のショック離脱率はステロイド投与群で高かったが,入院中の死亡率は有意差がなかった(76%対77%対69%)。
Boneら3) はsevere sepsis,septic shockの382人の患者をメチルプレドニゾロン群(30mg/kg×4回)とプラセボ群に分けて比較したが,ステロイドのショックの予防,離脱率改善効果はなく,14日間の死亡率にいたってはステロイド群で高い傾向となった(34%対25%,p=0.06)。sepsis患者223人をメチルプレドニゾロン群(30mg/kgを15分で投与後,5mg/kg/hr×9時間)とプラセボ群に分けて検討した同年報告の研究2) でも,14日間の死亡率に有意差を認めなかった(21%対22%,p=0.97)。これらの研究結果により,sepsis,severe sepsis,septic shockに対する大量ステロイド投与の有効性は否定された。
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