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日本は世界的にみてもHIV(ヒト免疫不全ウイルスhuman immunodeficiency virus)患者数が少ない国といえる(臨床メモ1)。しかし,少ないからといってHIV感染症を無視することはできない。特に集中治療の領域では,胸部画像における間質性陰影からニューモシスチス肺炎Pneumocystis pneumonia(PCP)と診断され,基礎疾患としてHIVが判明するという形でかかわることは十分予想できる。実際,胸部画像で認められた間質性陰影からPCPならびにHIV感染を診断した症例が,2007年の感染症学雑誌に掲載1)されており,そのうちの1症例は死亡例であった。1981年6月にロスアンゼルスで5件続いたPCPの症例がMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)誌上に発表2)され,後に米国におけるHIV感染によるAIDSの最初の症例と突き止められた。それから25年以上経った時点でも,同様の症例が我が国の感染症の専門誌に掲載されているということは,それだけ我が国では間質性陰影をきたす病変からPCPやHIVを想起するという診断過程の認識が徹底されておらず,注意を喚起する意図もあったのではと筆者は推測している。
本稿ではまず,集中治療領域の診療過程においてHIVとの関連性をどのような形で捉えていくかについての私見を述べる。その後,代表的な日和見感染症と免疫再構築症候群immune reconstitution inflammatory syndrome(IRIS)に関して,続いてHIV患者におけるICU入室に関する疫学を簡単に述べ,最後にICUにおける強力な抗レトロウイルス療法highly active antiretroviral therapy(HAART)について述べる。
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