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sepsisが,米国胸部疾患学会 American College of Chest Physicians(ACCP)と米国集中治療医学会Society of Critical Care Medicine(SCCM)の合同会議で感染症を基盤とした全身性炎症反応症候群 systemic inflammatory response syndrome(SIRS)と定義されたのは1991年である1)。心不全や癌などの慢性病態に合併した間接死因も含めると,本邦でもsepsisによって年間約5万人以上が死亡していると推測される。sepsisには多臓器不全が合併しやすいが,この病態生理学的機序もまさにSIRS増悪の機序として,分子レベルで明らかにされてきた。
sepsis病態では,菌体成分をリガンドとするToll-like 受容体(TLR)の初期シグナルにより産生された炎症性サイトカインが二次シグナルとして細胞炎症を増幅させる。このような炎症性受容体シグナルは,白血球系細胞だけではなく主要臓器の基幹細胞や血管内皮細胞にも認められ,このシグナル強度の差がsepsis初期の臓器炎症の強度の差を規定する。
炎症性受容体を細胞膜上に発現する鋭敏な細胞は,Alert細胞(警笛細胞),inflammatory alert cellとして,炎症性サイトカイン,ケモカイン,一酸化窒素(NO),オータコイドなどの炎症性分子の産生を高める。これらの分子を統括するのは,個々の細胞内シグナルの結果として高められた転写因子であり,さらにAlert細胞に生じる自己融解やアポトーシスがsepsis病態の改善を遷延させる。
本稿では,以上を踏まえてsepsisの病態にそくしたテーマをいくつか定め,sepsis病態を総論として論じる。
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