- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
2004年,“evidence based”なsepsis診療に関する世界で初めてのガイドラインとして,Surviving Sepsis Campaign Guideline(SSCG)は発表された。これは単なる感染症治療の記述のみならず,sepsisにおける初期蘇生方針(臓器低灌流を改善させるための呼吸循環の立て直しの指針)に加え,その後の支持療法を含めた管理指針にまで言及する,sepsis診療を包括的に捉えて詳説した極めて実践的なガイドラインであった。その後,2008年初頭にその改訂版となるSSCG 2008が発表された。これは,この4年間の新しいevidenceにより記載を改めたのみならず,推奨度について新たな基準を設けるなど,随所に新しい工夫がみられている。
救急・集中治療領域の学会に参加すると,必ずこのSSCGに関する講演が開催されており,そしていつも盛況であることに驚かされる。SSCG 2008は上梓されて1年以上が経過したにもかかわらず,依然としてhotな話題である。私たち集中治療に携わる者の間では,4年前のSSCG 2004の発表時よりもはるかに高い認知度を得つつあるようだ。半面,私たちの領域以外の,内科や外科など,sepsis診療に少なからず携わるであろう,メジャーと呼ばれる臨床科には普及しているとは言い難い。私たちもまた,人の訳したkey statementには目を通してはいても,原著にあたり,SSCG 2004と読み比べ,そこにある科学の是非に目を通しているものは少数かもしれない。
SSCGは熱狂的に受け入れられている一方,不協和音が少なからず存在するのも事実であり,無批判に日常臨床で使用するには注意を要する。本稿はそうした観点で,この新しいSSCG 2008の概要と,2004からの変更点,そして,その揺らぎ続ける背景を考察する。単なる推奨項目の解説にとどまらず,その裏にある現実まで踏み込んでみたい。
Copyright © 2009, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.