連載 集中治療医のための基礎医学101【新連載】
第1回:役立つ呼吸生理
八重樫 牧人
1
Makito YAEGASHI
1
1亀田総合病院 総合診療・感染症科
pp.138-148
発行日 2009年1月1日
Published Date 2009/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100175
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エビデンスに基づいた医療が求められるようになって久しい。一方で,実際の患者に行っている治療のすべてにエビデンスがあるのだろうか。すべてにおいて,C反応性タンパク(CRP)などの代替アウトカムではなく,死亡率などのハードコア・アウトカムが改善するかを示した研究があれば素晴らしい。しかし,例えば,重症の患者で命を救うと考えられている治療の「エビデンス」を作るために治験を組むことには倫理的に問題がある。そう,他の分野と同様に,集中治療の分野にもエビデンスがないものがたくさんある。
それでは,エビデンスがなければ目の前の患者は治療できないのであろうか。そんなわけはなく,集中治療が必要な患者でバイタルや呼吸機能,心機能などの生理機能 physiologyが保てないと死亡することがほとんどである。特に集中治療では,目の前の患者のphysiologyを維持することは大切なことである。それに,これは集中治療医以外にも当てはまるが,生理学を学ぶことで,さまざまな集中治療を要する理由,すなわち病態生理がわかり,応用が利くようになる。つまり,よき集中治療医となるためには生理学を学ぶ必要がある。もちろん,エビデンスに基づいた治療も大切で,これら2つは車の両輪のように補い合い,両者を適材適所で用いて,よい臨床医が生まれるのである。また,生理学を学ぶことで,目の前の患者に起きていることの病態生理,そして,現在やっている治療の理由が納得できることも多い。理由がわかれば応用が利く可能性が高くなる。
この連載では,なるべく集中治療に役立つところを強調するよう心がけた。生理学を学び,よりよい集中治療を行うための糧としてほしい。
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