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「ICU」と訊くと,高校生や大学生ならば,応えはまず「国際基督教大学(ICU)」でしょう。Googleで「ICU」とググッてみても,最初に出てくるのは,やはりこの大学です。そう,一般の方々は医師の説明する言葉をあまり理解されていないのが現状のようです。例えば最近,国立国語研究所が行った病院の言葉調査では,「ショック」は「急な刺激を受けること」などという具合に,半数近くの方々が誤解しているということが報道されていました。まるで,ICUに入られたショックの患者たちに,私たちが「急な刺激を与えまくっている」現場を目撃されてしまったみたいな感じですね。
そうしたことを考えると,ICUのことなど一体どれだけ理解していただけているかは,恐らく絶望的と思っても間違いではないでしょう。きっと,恐ろしく,考えも及ばないような場所だと思われているのではないでしょうか。私がICUの仕事を始めた20年ばかり前には,「術後はICUに入ります」と説明すると,「あそこに入ったら出てこられんのでしょう?」と嘆かれたものです。けれどホントは,院内で最もいい医療を展開している場所なはず,なのですが…ね。
大体において,生命の存在そのものが不思議でならない現象ですから,その生命を相手にする医療の現場は不思議なことだらけです。その中でも,ICUという空間は,医療者ですら,そこにかかわることの少ない医師・看護師の方々であったならば,恐れ多く(?)敷居が高く(?),できることなら近寄りたくない場所かもしれませんので,不思議さを醸し出している空間となります。一般病棟で,もうダメだろうと思われた重症患者が奇跡のごとくICUで立ち直られ,元いた病棟に無事に帰られたりしますし,さぞかし,不思議な力を持った「不思議の国な,ICU」と思われていることでしょう。
このコーナーでは,そんな背景をもとに,「不思議の国」かもしれないICUで展開される,不思議だけどまじめなことを,時には不条理も交え,話題にしていこうと思います。
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