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近年,抗菌薬耐性菌の増加が世界的な問題となっている。米国感染症学会Infectious Diseases Society of America(IDSA)は現存する抗菌薬を“ESKAPE”する耐性菌としてEnterococcus faecium(バンコマイシン耐性),Staphylococcus aureus(メチシリン耐性),Klebsiella spp.・Escherichia coli(広域βラクタマーゼ産生),Acinetobacter baumannii,Pseudomonas aeruginosa,Enterobacter spp.を挙げている1)。一方,新規抗菌薬の発売は1980年代以降減少傾向が持続しており,我々は“Bad bugs, No drugs”という状況に直面している1)。
「耐性菌」とは,広義には抗菌薬への感受性が低い細菌の総称であるが,臨床現場における「耐性菌」はより狭義に「耐性因子の獲得により,本来は感受性を有する抗菌薬に対して耐性となっている菌」を指すのが一般的である。このため,「耐性菌」を認識するためには,それぞれの菌種における特別な耐性因子を有さない状況での抗菌薬感受性を知っておく必要がある2)。耐性因子はプラスミドなどを介して外来性に獲得される場合(例えば,緑膿菌Pseudomonas aeruginosaにおけるメタロβラクタマーゼ遺伝子)もあれば,遺伝子の突然変異により内因性に獲得される場合(グラム陽性菌・グラム陰性菌のフルオロキノロン耐性の主要機序である標的部位の変異)もあるが,臨床で問題となる耐性因子としては前者の頻度が高い。
ICUの患者は基礎疾患の存在や治療的介入(侵襲的デバイスの使用など)の影響により感染症罹患の危険が高く,また,広域抗菌薬の使用頻度が高いこともあり,一般に耐性菌分離の頻度が高いと考えられている。
本稿では主に,ICUで抗菌薬治療上あるいは感染管理上問題となる頻度の高い細菌,あるいは今後問題となる可能性があると思われる細菌について概説する。
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