用語解説
薬剤耐性菌と菌の薬剤耐性
高橋 昭三
1
1東大細菌学教室
pp.125
発行日 1963年2月15日
Published Date 1963/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542906078
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ある薬剤,たとえばストレプトマイシンを含む培地に菌を接種した場合,菌のコロニーが生ずることがある。生じた菌を,その薬剤の,その濃度における耐性菌という。多くの場合,耐性ということは,接種した菌の性質を表わすのに用いられ,生えて来た菌の性質を表現することは少ない。というと妙な言い方のようであるが,臨床細菌学的には耐性という言葉は,菌株の性質をあらわすのに用いられているということである。
一人の患者から菌が分離された場合,その菌株の中には,ちょうど日本人男女の身長が大小種々あるように,耐性の高いもの低いものが,いろいろ含まれている。それを薬剤のある濃度,たとえばストレプトマイシン10mcg/mlに含む培地と含まない培地に接種すると,10mcg/ml以上の培地に発育できる菌だけが,10mcg/mlストレプトマイシン培地に発育してくるわけである。発育して来た菌は,ストレプトマイシン10mcg耐性菌という。また,接種に用いた菌株はその耐性菌を含むという。更に,菌株の中に含まれる菌の大部分がストレプトマイシン10mcg耐性菌ならば,この菌株はストレプトマイシン10mcg耐性であるというのである。耐性菌がどのくらい含まれているかは,薬剤を含む培地と含まない培地の両者にほぼ同数の菌を接種し,生じた集落数を比較すればよいわけである。
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