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はじめに
医療の現場において,いわゆる「Bad News」,たとえばがんや認知症など大きな病気や, 余命などの重大事項の告知を行わなければならない場合は多々ある.これは医師にとって も大きな心理的負担ではあるが,とくに病名告知などはその疾患の専門医でなくても行う 必要があるため,プライマリ・ケアを含め,どの分野を専門としていたとしてもBad News を伝える技術はある程度知っておく必要がある. がんなどの病名や余命の告知,また終末期に向けた話し合いといったつらい話をするこ とは,患者や家族に精神的な害を与えるのではないか,と心配される方も多いかもしれな いが,この点についてはこれまでの研究では否定的な結果が出ている.たとえば,余命の 告知に関しては,それを行うことによって医師-患者関係が悪化したり,悲嘆や不安,抑 うつが悪化するという事実はないと報告されている1, 2).また,終末期に向けた話し合い についても,その実施によって抑うつや不安,絶望感は悪化しないということも示されて いる3, 4). もちろん,悪い話を伝えられた後は,誰しもが一時的に抑うつ状態となり,日常生活を 送ることに支障をきたすことはあるものの,その多くは状況に適応し,再び日常生活が送 れるようになるとされている.適応できずに,抑うつや適応障害を発症してしまう危険因 子としては,「何を話すか」ということよりも,若年であることや,痛み・倦怠感などの身 体症状,うつ病の既往といった要因や,社会的支援の欠如,短い教育経験などの社会的要 因が関与しており,そしてそれよりもさらに,患者個人の性格傾向の与える要因が大きい ことが示唆されている5, 6).
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