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■症例
62歳の男性。身長165cm,体重78kg。20本/日×40年の喫煙歴があり,慢性閉塞性肺疾患(COPD)を認め,呼吸機能検査で1秒率(%FEV1.0)65%であった。61歳時に直腸癌でロボット支援下低位前方直腸切除術を受けた。その際に術後X線検査で無気肺を認め,喀痰の吸引,肺リクルートメントを行ってから抜管したというエピソードがある。その手術の1年後のCTで,肝S7区域に径15mmの腫瘍を認めた。直腸癌転移の診断で,腹腔鏡下肝S7区域切除が予定された。
■麻酔経過
T8/9に硬膜外カテーテルを留置後に,プロポフォール,レミフェンタニル,ロクロニウムで全身麻酔を導入した。左橈骨動脈に動脈圧ラインを確保した。換気設定はCOPDがあること,前回手術での無気肺のエピソードから吸入酸素濃度(FIO2)40%,1回換気量400〜450mL,換気回数10〜14回/min,呼気終末陽圧(PEEP)5cmH2Oとした。10mmHgで気腹を開始した後の経皮的末梢動脈血酸素飽和度(SpO2)は,気腹前と変わらず99%であり,気道内圧は15cmH2Oから20cmH2Oに,呼気終末二酸化炭素分圧(PETCO2)は40mmHgから48mmHgまで上昇したが,許容範囲として経過観察とした。
頭高位とし,十二指腸間膜をテーピングし,Pringle法(肝門遮断)により,肝動脈と門脈の肝流入血管を遮断した。Pringle法は15分の遮断と5分の遮断解除のサイクルで行った。肝切除が開始され,3回目の遮断中に術者から肝切離面からの出血が多いことを告げられた。PEEPによる肝静脈圧上昇による出血の可能性が考えられたため,PEEPを解除して手術を再開した。気腹圧は12mmHgへと変更された。4回目の遮断中にSpO2が90%,PETCO2が25mmHgまで低下していた。
さて,あなたならどうする?
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