徹底分析シリーズ —なるほどナットク!—ICUにおける人工呼吸—前編
横隔膜機能不全—肺保護の次は横隔膜保護!?
下薗 崇宏
1
Takahiro SHIMOZONO
1
1神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科・集中治療部
pp.182-187
発行日 2024年2月1日
Published Date 2024/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202834
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人工呼吸管理は,重症呼吸不全患者の救命になくてはならないものである。しかし一方で,不適切な人工呼吸管理によりventilator-induced lung injury(VILI)1)が引き起こされることが明らかとなり,人工呼吸管理において,肺保護という概念2)はすでに広く知れ渡ったものとなっている。さらに近年,不適切な人工呼吸管理によって,人工呼吸器誘発性横隔膜機能不全ventilator-induced diaphragm dysfunction(VIDD)3)と呼ばれる横隔膜傷害も引き起こされていることが明らかとなってきた。発症すると人工呼吸期間の延長や生命予後の悪化などにもつながることが示唆されているため,VIDDを予防することは,人工呼吸管理における重要な管理目標であると認識され始め,横隔膜保護という概念4)も提唱され始めている。現時点ではまだ検証段階ではあるが,今後,肺と横隔膜の両方に対して保護的な換気が,人工呼吸管理の主流となり当然の戦略になっていくかもしれない。
本稿では,まず横隔膜を中心とした呼吸筋について概説した後に,VIDDの発症機序や疫学について解説し,最後に横隔膜保護換気の考え方についても触れてみたい。
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