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■症例
34歳の女性。1経妊0経産。身長161cm,体重80kg(非妊娠時体重68kg)。妊娠39週4日,硬膜外鎮痛による無痛分娩下に分娩誘発を行った。心電図,胸部X線検査に異常なし。血液検査に異常なし。胎児心拍数陣痛図cardiotocogram(CTG)では5分おきの規則的な子宮収縮あり,基線が140bpmで,一過性頻脈あり。痛みに対する恐怖心が強く,陣痛も嫌だが脊髄幹鎮痛の穿刺も非常に怖がっている。
■症例経過
子宮口開大3cm時点でvisual analog scale(VAS)が75mmとなり,硬膜外鎮痛を開始した。L3/4から硬膜外カテーテルを留置し,0.2%ロピバカイン3mLを硬膜外投与した(穿刺の恐怖で流涙あり)。急激な感覚および運動神経遮断なく,バイタルサインも正常であったため脊髄くも膜下鎮痛になっていないと判断し,0.2%ロピバカイン5mLを10分間隔で2回追加投与した。最終投与から15分後,冷覚消失域は両側T10以下となり,修正Bromage scaleは両側0であった。VASが10mmまで低下したため,鎮痛維持として0.08%ロピバカイン(フェンタニル2μg/mL含有)を10mL/hrで持続硬膜外投与を開始した。
鎮痛開始3時間後に人工破膜を行い,さらに1時間後にVAS 50mmの疼痛増強の訴えがあった。冷覚消失域は左側がT12以下,右側がL1以下であり,右側臥位で0.1%ロピバカイン4mLを硬膜外投与した。15分後にVAS 5mmとなり,冷覚消失域は両側T10以下であったため,経過観察とした。
分娩は緩やかに進行し,鎮痛開始8時間後に子宮口開大8cmとなったが児頭下降なく,分娩停止と判断され緊急帝王切開術の方針となった。CTGでは胎児はreactive patternであり,母体のバイタルサインに異常はない。
産婦本人から「手術の麻酔は,また背中の注射なのでしょうか…」と不安の表出あり。
さて,あなたならどうする?(ただしあなたは分娩室に常駐する麻酔科医とする)
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